早朝5時過ぎ。
常磐線下りの始発で福島に向かいます。
目的地はいわき。
レンタルバイクでツーリングをしたり、お酒を楽しんだりする旅の始まりです。
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レンタルバイクでの福島ツーリングを堪能した3人組。
「福島ツーリング」なんて大袈裟な言い方をしたけれど、走った距離はものの140キロ。当初の目的地・猪苗代湖にもたどり着けませんでした。
大袈裟に「ツーリング」というのもおこがましいくらいのショートトリップだったけれど、とはいえ大満足。
山へ海へと走り回り、試乗会まで開催したんだから思い残すことはありません。
しかし今回は、これでは終わりではないんです。
なんせ泊まりですからね。
ツーリングの後のお酒を「全員で」楽しむことができるんです。
バイクを返して、お店の方に聞いてみます。
「駅周辺で、おすすめの居酒屋なんかありませんか?」
お店の方は残念ながら飲んだくれではないようです。が、いくつかの答を返してくれました。
それをもとに、後は自分達の足で街を徘徊して決めることにします。
バイク屋さんを後にして、ビジネスホテルへチェックイン。
1日の汗をシャワーで流して街へ繰り出しましょう。
実は私、この「後夜祭」をすごく楽しみにしていたんです。
楽しいイベントの後、余韻に浸りながら飲むお酒って最高じゃないですか。
もちろんそのイベントはツーリングじゃなくてもいいんです。
釣りでもいいしコンサートでもいい。
楽しい時間を共有した仲間と一緒に味わうお酒の時間はまた格別です。
が、残念ながら普通のマスツーリングではこれが叶わない。
当然ですよね。バイクだもん。
アルコールを入れるわけにはいきません。
でも今日はイケるんです。
なんせ泊まりだから。
丸一日楽しんだツーリングを思い返して、撮った写真を見返して、なんならベロンベロンになっても構わない。
なんせホテルに戻って寝るだけだから。
そんな貴重な機会です。
まずは3人揃って街を徘徊。
プロレス部らしく、全員プロレスTシャツ着用です。
もちろん私はこのために買った鈴木みのるTシャツを着て出掛けますよ。
小雨混じりの街をウロウロしながら良さそうな居酒屋を探します。
いくつか気になるお店がありました。
お腹も空いていることだし、最初のお店はバーなんかは却下。
そうして1軒目に選んだお店は旬彩厨房だんだんさん。
投宿先にもほど近く、なかなか雰囲気のいいお店です。
確かバイク屋さんに聞いたいくつかの候補の中にも入っていたようないなかったような・・・。
このお店、そもそも店構えがいい。
どことなく大正感が漂うノスタルジックな佇まい。
もともと想定していたのは、もっと小さくて地元の人しか来ないような小汚い居酒屋だったけれど、これはこれで悪くない。
なんならそういうハイレベルな居酒屋は2軒目に取っておいてもいい。
そう考えて、入店します。
幸いなことに、待たずに入ることができました。
通されたのはやはり小洒落た雰囲気の個室です。
今日のツーリングを思い返しつつお酒を飲むには最高の環境じゃないですか。
いくつかの肴を頼んで早速ビールで乾杯します。
ホントはお店の写真でも撮っておけば良かったものの、話に熱中しすぎて完全に忘れてました。
私が撮ったのは冒頭の1枚のみ。
ほかのメンバーも全然撮っていなかったようです。
なぜだかニクドロさんが天井の写真を撮っていました。
「なぜ天井・・・???」と思わなくもないですが、せっかくだから載せておきます。
大正感漂う雰囲気が、少しは伝わるでしょうか。
バイク談義に花が咲き、お酒が進みます。
と言っても、何を話したかももう完全に忘れてしまいました。
ただただ楽しかったという記憶だけが残っています。
意味もなく楽しかった、という感情だけが。
仕事仲間との飲み会とも、学生時代からの友人とのお酒とも違う心地よさ。
考えてみたら、「同じ趣味」という繋がりの仲間で飲むお酒の場って、半世紀に及ぶ人生の中でもあまり経験がなかったかもしれません。
バイクはもちろん、釣りにしろキャンプにしろ、趣味に勤しむ時間はほとんどがソロだったし。
そもそもキャンプ以外はアルコールと相性の悪い趣味ばかりだし。
リターンライダー。
10数年ぶりに乗ったバイクがこんな時間まで運んできてくれるなんて、リターンするまでは想像もしていなかったこと。
今考えると、少し前までの自分は生活のほとんどを仕事に費やして、趣味に興じる時間も持てずに惰性で生きていたような気さえしてきます。
いい感じにアルコールが入って、すでにほろ酔い。
2軒目を探して、よりディープないわきの街に足を踏み入れます。
細い路地にひしめくバーやスナック、キャバクラ、フィリピンパブ、and so on。
おそらくここが、いわきの中で最も怪しげな界隈。
上機嫌で徘徊する私とニクドロさんを、tunaさんがこっそり隠し撮りなんかしてました。
そして見つけた1軒のバー。
さまざまなお水系店舗が軒を連ねる界隈にあっても、ひときわ異彩を放つ店構えです。
すでにほろ酔いであろう陽気なマスターが、「ウチあんまりお酒ないよ」と言って迎えてくれたその店は、当初イメージしていた居酒屋のような、まさに「地元のおじさん」が集う場所でした。
雰囲気がひたすら怪しいという点を除いては。
ウイスキーをロックで頼んで、マスターと、数人の先客とのおしゃべりに興じます。
「青森と千葉から集まって、レンタルバイクでツーリングしてきたんですよ」
そんな会話をきっかけに、その店にいた全員がバイク乗りということが判明しました。
そのうちの1人は関東から福島に転居したばかりで、ちょうど教習所に通っているところ・・・、だったかな。
1番盛り上がった話すら、すでにうろ覚えです。
冷蔵庫に冷えたコロナを見つけて、それを頼みます。
栓を抜いただけの瓶が目の前に置かれました。
つまりライムも刺さっていません。
なんて雑な店だろう。
これはこれで、ぜんぜん悪くない。
実はこのお店。
名前はおろか、場所すらも定かではありません。
「今度またいわきに行ったら、あのお店には絶対行こう」
そう思ってグーグルマップを見返してみたもの、見つけることも叶いませんでした。
実はあの店は本当は存在してなくて、異空間にスリップしてたどり着いた場所だったのかもしれない。
そこにあったのは、そんな馬鹿げた妄想を掻き立てるほどの非日常感でした。
前回までのお話はこちら↓↓↓