風来爺のリターン日記

年間休日数55日の地味に苛酷気味なサラリーマンが、バイクにキャンプに釣りにとリターンするブログです。Twitter @furaijie Instagram @furaijie

自分のルーツを辿る旅 ハラコセキを取りに横浜へ

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ことの発端は、突然届いた保険証だった。

何の前触れもなく届いたものの、手元にあるのと何ら変わらない健康保険証。

もちろん転職した訳でもない。

 

理由が分からず、とりあえず全国健康保険協会、いわゆる「協会けんぽ」に電話してみます。

なんかいきなり新しい保険証が届いたんですけど、これ何ですか???

 

「住民票に異動があったりしませんでしたか?」

返ってきたのは、逆にこちらに対する質問でした。

が、思い当たる節が全くありません。

「最近、保険証とマイナンバーが紐付けされたので、住民票に異動があると保険証が再発行されるんです。前の保険証と比べて、変わっているところはないですか?」

よくよく保険証を見比べてみると、確かに名前の字が変わっています。

正しかった字から、間違ったへ。

 

「何らかの理由で住民票の名前の表記が変更されて、それに伴って保険証が修正された可能性が高いです。こちらでは分からないので、市役所にお問合せください」

唐突な質問であったにも関わらず、かなり的確に回答をくれました。

 

私の知らないところで勝手に名前の字が変更された。

しかも間違った字へ。

そんなことがあるんでしょうか?

疑心暗鬼ながらも、丁寧な回答をくれた協会けんぽの担当の方にお礼を言って電話を切ります。

さてさて、次は市役所か。

 

明くる日。

市役所に連絡して、同じ質問をぶつけてみます。

果たして、予想だにしなかった回答が返ってきました。

「戸籍上のお名前と住民票のお名前に齟齬が生じていたので、修正するように本籍地から指示が来てますね。それで直された履歴があります」

 

???

え?

なんですって!?

 

いやいや自分の名前なんか間違えませんよ。

あたしゃかれこれ半世紀もこの名前と付き合ってるんですからね。

ってか、わざわざパソコンでも出ない面倒な字を使ってるくらいなんだから、間違えるはずがない。

印鑑買ったら間違えた字で届いて、返品したことだってあったくらい。

こりゃ戸籍が間違ってるんだな。

と、その思いをぶつけてみると、こちらも丁寧に回答をくれました。

「大変お手数ですが、本籍地の市役所に確認してみてください。住民票は戸籍の字を使わざるを得ないので、こちらで変更することはできないんです」

まぁ、そりゃそうですよね。

住民登録なんかより、戸籍の方が強いに決まってます。

そのまま本籍地に電話。

三度目の正直で、スルッと解決してもらおうじゃない。

 

と思っていたんです。

が、事態はそれほど簡単なことではありませんでした。

本籍地の戸籍担当の方から出た言葉は、かなり衝撃的なものでした。

「風来爺さんが仰っている内容が正しいと証明する書類などはありますか?」

 

証明する書類、だと???

そんなもんある訳ない。

が、あたしゃかれこれ半世紀も・・・以下略。

「親御さんがそう思い込んでて、間違った字を使われてるケースも結構あるんですよ」

 

いやいや思い込みって、そりゃあんたちょっと失礼じゃない?

あたしゃかれこれ・・・以下略。

しかも間違っているのは氏。つまり名字。

なんならウチの親に至っては、80年以上も間違えてたって話だよ。

 

が、その方の話では、それほど珍しい事でもないんだそう。

そもそも戸籍を変更するのはかなりの一大事で、明確な理由がなければできないと言います。

まぁ、そりゃそうだわな。

思い込みで変えちゃってたら、戸籍制度の根幹が崩れるような話だし。

 

考えられる可能性は二つ。

一つは前述の「そもそも思い込みで自分の名前を間違えてた」というケース。

もう一つは「役所の手続きのミスで転籍時に間違って入力された」というケース。

特に私の場合、自分の名前がパソコンでも出ないいわゆる「俗字」なので、入力時に「正字」で登録した可能性も否定できないーとの事でした。

いずれにせよ、どちらの字が正しいのかを明確にしなければ、戸籍の変更はできません。

しかも、「根拠となる古い戸籍の文字が潰れていて明確に判別できないような場合、つまり『違ってそうに見える』くらいでは変更できない」んだとか。

こりゃ想像していたよりも、ちょいとハードルの高い手続きのようです。

 

というか、ね。

むしろ怖いのは「思い込みで自分が間違っていた」というケース。

仮にそうだとすると、今使っている名前を全部変更しなければならないという地獄が待ち受けています。

免許証はもちろん、仕事で使っている資格、金融機関、なんなら印鑑だって全部。

とはいえ、さすがにそれはないだろう。

 

仕方ない。

とりあえず今の本籍地の前、つまり結婚前の戸籍を取りゃ方が付くだろ。

明日行くか。

 

戸籍謄本は郵送でも取れるんですが、なんせそれだと時間が掛かる。

近々に身分証明書を取らなきゃならない予定もあるし、そもそも自分の名前が定かでないなんて状態は気持ちが悪い。

調べてみたら、丸々一日使って走り回れば、その日のうちに解決できそうな感じです。

 

それじゃ行きますか。

まずは改製原戸籍を取りに。

 

改製原戸籍。いわゆるハラコセキ

除籍になった人も含めて記載された、改製前の戸籍です。

たまたま中の人の仕事柄、戸籍に関する多少の知識があったのが幸い。

「ハラコセキ取って字を確認したら、その足で本籍地に行って手続きして万事解決だろ」

一日で全てを片付ける、あまりにも完璧すぎる計画です。

役所巡り。200キロほど。

ツーリングだと思えば悪くない。

うん。ぜんぜん悪くない。

 

まずは横浜へ。

横浜はどこの区役所でも住民票も戸籍も取れるというのは事前にリサーチ済みです。

というか、何度か証明書の類を取りに来たことがありますからね。

千葉から行って一番近いのは鶴見区役所。

駅の行政サービスセンターという手もあるけれど、バイクで行くなら本庁舎の方が便が良いか。

 

200キロ程度のショートツーリング。

鍋焼きうどんを啜って身体を温め、デグナーのワックスコットンジャケットとコミネのフルイヤーケブラージーンズに身を包みます。

さぁ行こう、GNくん。

今日は神奈川。お役所巡りだよ。

 

普段のツーリングと何ら変わらない気分でエンジンを始動。

最初の目的地まではたかだか50キロあまり。

のんびりと湾岸線経由で行きますか。

 

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スタートして間もなく、道の駅いちかわに軽く寄り道。

こんなところも普段のツーリングも全く変わらないペースです。

あのランド、お台場と、都会を走る道を抜け、国道357号で東京湾をくるっと回ってそのまま国道15号へ。

あともう少しで神奈川県というタイミングで小休止を挟みます。

コンビニにGNを停めて、缶コーヒーを買って一服。

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ナビによればあと数キロ。20分足らずで目的地です。

 

少しだけ緊張してきました。

「さすがにそれはないだろう」と思ってはいるものの、もしかしたら半世紀も慣れ親しんだ自分の名前が間違っている可能性が捨て切れないのだから。

気を取り直して、リスタート。

ルーツを辿って、自分の認識が正しいことを証明してやろうじゃないですか。

あっという間に鶴見区役所に到着です。

 

発行申請書に記入して、窓口に提出。

さほど待つこともなく番号を呼ばれました。

「750円の証紙を買ってください」

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受け取った、初めて見る自分の原戸籍。

なるほどなるほど。

こういう風に記載されているのか。

結婚前の両親の本籍地。

祖父母の名前。

自分が結婚に伴って除籍となった事実。

改めて見てみると、結婚した年もあやふやになっていたし、祖父母の名前すら忘れていたことに気が付きます。

これだけでも、取りに来た甲斐があったくらいです。

 

が、肝心の「字」はと言うと・・・。

 

え???

見えない、だと!?

 

間違っているかもしれない名字の一字、残念ながら明確に判別が付きません。

古い印字だから、ところどころ滲んで細かい部分が潰れてしまっています。

何カ所にも記載はあるものの、自分の認識通りの「俗字」に見えるものもあれば、むしろ「正字」に近いものもある。

これだと明確な根拠にはならない、か。

さて困った。

 

もう一度、窓口へ。

事情を説明して、「もう少し明瞭な字で印刷できないか」「パソコン上で拡大できないか」と、お願いしてみました。

が、結果はいずれもNG。

「こちらをお持ちいただいて、本籍地でご相談いただくしかないです」

 

そうですか。

でも実は、明瞭な書類じゃなければNGという回答を、すでに本籍地からは承っているんです。

このまま行っても期待の結果は得られない。

200キロの役所巡りツーリング、初っ端から行き詰まってしまいました。

 

これが使えないとなると、次はもう一段階遡るしかない。

そしてその場所は九州。

とてもとても自分で取りには行けません。

仕方ない。仕切り直しです。

 

これは郵送で取り寄せることにして、結果的にここから先は完全にフリー。

せっかく横浜まで来たんだから、市街地まで足を伸ばしてお昼でも食べて帰ることにしましょうか。

 

真っ先に思い浮かぶのは梅香亭

言わずと知れた洋食屋の老舗ですが、もう何年も前に閉店してしまっています。

さてどうしよう。

 

とりあえず市街地に向けて駒を進めます。

みなとみらいへ。

ここと伊勢崎町、山下町辺りが横浜観光のメッカと言ったところでしょうか。

久々に訪れた土地ではありますが、さほどの感慨はありません。

なぜだろう。

毎日のように仕事でウロウロしてた場所なのに。

 

記憶の景色より圧倒的に建物の数は増えているし、見慣れないゴンドラなんかも通っている。

懐かしさを感じないのはそのせいなのか、はたまた単に私が歳を重ねたことで、10年前が「懐かしい」というジャンルから外れてしまったせいなのか。

 

ブログ的にはここらで“映え”する写真でも撮っておけば良いものの、そんな気分が盛り上がることもなく華麗にスルー。

“横浜ツーリング”として考えたらここは山下町方面に向かうべきですが、ふと思い立って関内方面に舵を取りました。

そうだ。酔来軒に行こう!

 

酔来軒。

横浜橋商店街の近くにある、いわゆる町中華。

観光として行くような店ではないけれど、地元で人気の食堂です。

横浜勤務の頃、外回りの合間にときどきお昼を食べに訪れた懐かしいお店。

みなとみらいには何の思い入れもないけれど、たぶんここなら私の横浜気分を満たしてくれるはず。

 

横浜公園の傍を通って南区へ。

南区役所の駐輪場にバイクを停めて、お店に向かいます。

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午後2時過ぎという中途半端な時間ながら、店内にはかなりのお客さん。

やはり人気のお店です。

席に着くなり、決めていたオーダーを伝えます。

「酔来丼と小ワンタンをください」

酔来軒と言ったら、やはり店名を冠した酔来丼。

ご飯の上にラーメンの具と目玉焼きを乗せた素朴な丼です。

スープ代わりに優しい醤油味のワンタン。

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ああ、うまい。

 

お値段、400円と200円。

10年以上前の記憶なので定かという自信はないですが、おそらく変わっていないと思います。

もちろん味も。

しっかり覚えているわけではないけれど、ちゃんと美味しくてちゃんと懐かしい。

横浜気分、完全に満たされました。

 

当初の課題は一切進展していないけれど、酔来軒を目的に走ってきたと思えば充実した一日です。

うん。楽しかった!

 

帰りも同じルートで、64キロ。

大した渋滞もなく快適に走って、暗くなる前に着きました。

満足です。

 

でも。

帰宅して、ふと気付いてしまったんです。

そういえば、ガンダム見てねえ

 

山下埠頭に堂々と立つ、動く実物大ガンダム。

前々から見たかったはずなのに、今日は完全に忘れていました。

無念・・・。

 

まあいいか。また行けば。

思っていたより横浜は近かったし、都内を抜けるルートも恐るるに足らず。

それが分かったことも今日の収穫としよう。

 

本来の目的「自分の名前の確認」は、しばし継続です。

 

完結編はこちら↓↓↓

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