時刻は朝7時。
ちょうど予定していた出発の時間です。
今日はGNに乗り出して初めての、1泊2日の温泉ツーリング。ちゃんと宿を予約して、前々から楽しみにしていた一大イベントです。
なんせ温泉ですからね。
早めに宿に着いてのんびりしたいから、スパッと出発するつもり、だったんですよ。
が・・・。
出られません。トイレから。
のっけから汚い話で申し訳ないんだけれど。
10月・11月と、中の人がそりゃもう大変お忙しかったそうで、風来爺の活動もしばしお休み。
やっと仕事が落ち着いたツーリング前日、最後の〆にお酒の席が入っていたんです。
慌ただしい日々からの開放感も手伝ってビールが進み、気付けば23時。
終電に近い下り線で帰路に着き、やっとのことでベッドに潜り込んだのは軽く1時を回っていました。
少し飲みすぎた、かな。
微睡む間もなく深い眠りに落ちました。
6時の目覚ましで、起床。
コーヒーを淹れ、トーストを焼きながら手早く準備します。
アルコールは完全に抜けていて、体調は万全。
と、言いたいところですが・・・。
思わぬ伏兵が潜んでいました。
その名は便意。
それも代わる代わる連続で襲って来やがります。
おまけに今日はほぼ冬装備。
防風インナーを装着したコミネのライディングパンツの下には少し厚手のタイツまで着込んでいます。
途中でトイレに駆け込むとなれば、この鉄壁のガードが仇となりかねません。
はやる気持ちを落ち着かせます。
予定より30分ほど遅れたものの、何とか出発。
目的地は伊豆・修善寺。行程は170キロ。
まずは都心へ向かいます。
途中、多少は渋滞したものの、比較的快調なペースでスカイツリーの麓を通過。
日本橋を抜け、銀座を抜け、海岸通りを下って神奈川を目指します。
スタートから約2時間。
横浜に入ったところで、1回目の休憩を挟みましょうか。
ここまでは想定していた以上にスムース。
考えてみたら今日は祝日なんですね。
通りで都内が空いていたわけだ。
日々の勤労に感謝しつつ国道15号を下り、青木橋で1号へ。
勝手知ったる横浜の道ですが、考えてみたらGNで走るのは初めてのこと。
かつての通学ルートをかすめ、権太坂を登り、旧友の実家の横を通り過ぎ、ひたすら1号を駆け抜けます。
この先に待っているのは悪名高き渋滞スポット、原宿交差点。
横浜新道との合流地点を過ぎると、少しずつ混みだしてきました。
少し走って見えてきた原宿交差点の標識。
に、強烈な違和感を覚えます。
「立体交差になっている、だと???」
そういえば忘れてました。
原宿交差点の立体化、ずいぶん前に完成したんですよね。
昔の強烈な渋滞のイメージが強くて、環状4号線をアンダーパスする立体交差事業が完了したことなどすっかり記憶から抜け落ちていましたよ。
でもね。
こんなこと言ったら身も蓋もないんですが、あんまり混雑は緩和されていない気が・・・。
とはいえ、我慢のライディングを強いられたのもほんの少しだけ。
藤沢を抜けた辺りで国道134号へ。
だってほら、せっかくだから海沿いを走りたいじゃないですか。
サーフボードを積んだビーチクルーザーの車列を横目に見ながら海を目指します。
134にぶつかると、そこにはキラキラ光る海。
久しぶりに見た相模湾です。
これが夏なら地獄のような渋滞の洗礼に晒されますが、この時期なら大丈夫。
一定の回転数をキープして、ひたすら西へ。
大磯の松並木を抜けたら、もう二宮。
2回目の休憩を挟みます。
時刻は12時。
かなりハイペースで走ってきたようです。
そろそろ昼食がてら、しっかりと休憩を取った方がいい頃合い。だけどこんな日は、お昼を食べる時間ももったいない気がしてしまいます。
暖かい日が差していて、それでも浴びる空気は少し冷たい。
バイクに乗っていて、一番気持ちの良い感覚。
缶コーヒーで一息入れつつ、「どうせこの時間はお店も混んでるだろうしな」なんて自分自身に言い訳して、そのまま走り出してしまいました。
もうすぐ小田原。
それを抜けたら熱海まで、今日のツーリングのクライマックスです。
海を眺めて海岸線をひた走るワインディングロード。ここまでの行程は、この30キロのためと言っても過言ではないくらい。
否が応にも気持ちが高ぶります。
漁港の駅「TOTOCO小田原」を越えたらワインディングのスタート。眼下に海を見下ろしながら走る、極上のツーリングコースです。
「ひぃぃぃいやっほぉぉぉぉぉぉお!!」
ヘルメットの中で雄叫びを上げつつも、その猛々しさに見合わないトコトコペースで走ります。
速過ぎず、遅過ぎず、快適なスピードで。
ブログに記すことを考えたら、ホントはここらで写真の1枚でも撮っておけばよろしいのだろうけれど、止めるのすらももったいない。
ノンストップで真鶴、湯河原を抜け、熱海へ。
我が相棒GN125-2F、初の静岡県に突入です。
熱海の市街地はやはり少し渋滞しているものの、このくらいなら全く気にしない。
「そういや熱海の秘宝館、まだあるんだ? 行ったことないな」
なんてことを考えながら。
海沿いのルートを満喫したら、今度は峠道。
左折して、熱海大仁線に入ります。
するとそこは、予想だにしなかった急な坂道。
7千回転、8千回転、9千回転!
3速、2速とシフトダウンして、めったに使うことのない高回転域で駆け上がります。
をぉぉぉぉぉおっ!!!
頑張れGN!
これはこれで、楽しいぞ!
行き交う車もまばらな峠道を駆けて行くと、左手に海が広がりました。
頂上、山伏峠です。
圧巻の景色です。
ここから先は下り坂。
前にも後ろにも車はおらず、自分のペースで走れます。
これはラッキー。
後ろに速い車なんかにくっつかれた日にゃ、プレッシャーを感じてしまいますからね。
峠道の終わりが近づいてきました。
そろそろ目的地、修善寺です。
Google先生の案内通りに駐車場へ。
着いた、かな?
お寺感が全くないじゃない。
どうなってんだ?
と思ったら、観光協会でした。
それじゃここにバイクを停めて、少し散策をしてみましょうか。
温泉街をトコトコ歩いて、修善寺へ。
確か20代初めの頃、家族旅行で来て以来です。
なんせ我が家は家族旅行なんかほとんどしないウチだったので、とても記憶に残っていますよ。
家族旅行らしい家族旅行と言ったら、これを含めて生涯で3回だけ。あ、結婚した後にも1度だけ行ったから、都合4回か。
風来爺のソロ気質は、おそらくそうやって形成されてきたものでしょう。
独鈷の湯(とっこのゆ)へ。
ここ、確か昔はガチの温泉でしたよね。
入っている人を見たことはないですが、「強者は全裸で入る」という話を聞いたことがあります。
残念ながら今は入浴禁止、足湯も禁止になっていました。
まぁ、私はそもそも全裸で入る勇気はないですが。
気付けば時刻は15時過ぎ。
そろそろ宿に駒を進めましょうか。
と、思ったけれど、何やら気になる看板を見つけてしまいました。
「支那そば」と書いてあります。
実はね、もう身体が冷え切っていて、さっきからラーメンのことしか考えられなくなっていたんです。
せっかくの観光なんだから、土地の名物とか食べたら良いのは分かっているんです。が、そのままフラフラ引き込まれてしまいました。
「雲呑麺とご飯をください」
出てきたのは、優しい味の、おいしいおいしい雲呑麺でした。
なんだ、やっぱり正解だったじゃない。
こういう素朴なラーメン、好きだなぁ。
うん。満足。
今日のツーリングはここまで。
宿に行って、今度は温泉を満喫しよう。
お風呂に入ってあったまって、それからビールを流し込もう。
【後編】に続く