洞窟の奥から射す太陽の光が水面に反射して、ハート型の光を形作る、という亀岩の洞窟。
千葉の観光名所の一つに数えられる有名スポットです。
ただ、これを観るには時期とタイミングが重要。
季節で言ったら春分と秋分の前後。
時間は朝の7時ごろ、らしい。
ならば今回をおいて他にはない、と思えるほど絶妙のタイミングで今週のお休みです。
春分の日を2日後に控えた、晴天予報の水曜日。
しかも前日は早めに仕事を切り上げたから、言わば1.5連休です。
6時半ごろには現地に到着したいから、約100キロの走行距離から逆算すると起床時間は午前3時。
普段なら尻込みしちゃうけど、早めに寝られる今日ならば実現可能な行程です。
でも実は一つだけ、決して小さくはない問題がありました。
GNの振動で壊れてしまったiPhoneのカメラ、まだ直ってないんです。
せっかく行くなら、ハート形に光る洞窟を写真にも収めておきたい。
しかしながら、たまにしか焦点が合わない今の私のiPhoneには、とても耐えられない任務です。
そう考えて、出した結論がこちら。
α100。
その昔、会社の先輩から格安で譲ってもらったデジタル一眼。
確かこれ、SONYがミノルタからαの名前を継承した初期の頃のモデルのはず。
おそらく15年ぐらい前。
古い機種だけど、素人が撮る写真くらいなら十分過ぎるスペックです。
今回はこいつをリアのトップケースに放り込んで、千葉のワインディングを楽しんで来ようじゃないですか。
夜明け前。
というかまだ真夜中といった趣きの、午前3時半過ぎ。
寝静まった住宅地の真ん中で、静かに静かにエンジンを暖めます。
さぁ行こうGNくん。
今日は早朝ツーリングだ!
目的地までは約100キロ。
勝手なイメージで養老渓谷方面を想像していたけれど、実はルートが違いました。
千葉から市原に入った後は、うぐいすラインではなく久留里街道。
この時間なら、湾岸線も千葉の市街地も混雑することはないですね。
片側2車線、もしくは3車線の幹線道路。
ホントは5000回転くらいでのんびり走りたいけど、残念ながらそれを許してくれる環境ではありません。
周りのスピードに合わせると、かなりのハイペースを強いられます。
しかも、寒い。
20度くらいまで上がるという予報に踊らされて、真冬の装備よりもいささか軽装で出てきてしまったのが災いしました。
電熱でない中綿のグローブに包んだ指先はあっという間にかじかんできたし、袖口や襟元から侵入する冷気のせいでワックスコットンジャケットに包んだ身体も冷え切ってきました。
脚の震えは止まらないし、寒さのあまり歯が噛み合いません。
途中、コンビニの缶コーヒーで身体を温めては走り出し、寒さとコーヒーとで頻繁に尿意を催しては、またコンビニへ。
以下、繰り返し。
日が昇るまでは、ちょっと我慢のライディングです。
千葉辺りでナビを起動して、久留里街道へ。
時刻は5時半といったところでしょうか。
そろそろ空も白んできて、夜明けが近いことを知らせてくれます。
市街地を抜けると、行き交う車もまばらに。
ちょっとしたワインディングを堪能しながら、濃溝の滝の駐車場を目指します。
途中で何度コンビニに寄ったか分からないけど、ほぼ予定通り。6時半に駐車場に到着です。
今となっては最初のハイペースがむしろ僥倖、という感じ。
ふぅ、寒かった。
この駐車場、結構たくさんの車が停まっています。
これまでの道路はガラガラだったのに。
人はいないようですが・・・。
まぁいいや。
一眼レフを首からぶら下げて、亀岩の洞窟に向かいます。
と、そこには・・・。
すでに大勢の方がカメラを構えているではありませんか。
あ、「大勢」といったら語弊がありますね。
なんせ平日。休日の人出に比べたら、たかが知れてるレベルでしょう。
が、それでも数十人の先客が来ています。
なんとなく、あまり人気のない秘境のような場所をイメージしていた私は、ちょっと肩透かしを喰らった気分です。
でもまぁ、これはこれでアリ。
なんせこの人だかりのおかげで、ハート形に見えるであろうスポットが一目瞭然です。
実はちょっと不安だったんですよ。
ちゃんと場所が特定できるのか、と。
なんせ秘境を想像していたくらいですからね。
私もそこに混ぜてもらって、その時を待ちます。
洞窟の向こう側、そこに光が射すタイミング。
来る途中で見かけた看板には「6時40分ごろから7時20分ごろが見頃」と記してありましたが、すでに時刻は7時を回っています。
もしかしたら、今日はだめかな。
そんな気持ちになりかけていた7時半。
ファインダー越しに観る洞窟は、確かに幻想的なハートを形作っておりました。
肉眼で見ていただけでは分からなかったのに。
「写真を撮るというのは、矛盾に満ちた行為だ」
その昔、こんなニュアンスの文章をどこかで目にした記憶があります。
被写体の最高の一瞬に合わせてシャッターを切る。
それはすなわち、撮り手はその瞬間を見逃すことを意味する。
その一瞬を、写真に切り取ることと引き換えに。
何で読んだのかも覚えてないし、そもそも作者が言わんとしていた事は全く違うかもしれない。
それぐらいのうろ覚え。
でも、「なるほどなぁ」って思った記憶だけは残っています。
ついでに言えば、「どうせなら、肉眼で見たほうがいいじゃない-」とも。
これまで写真を趣味と考えたことも、ましてや本気で取り組んだこともなかったですが、「ファインダー越しに見ることで、初めてその姿を認識した」というのはちょっと新鮮な体験でした。
写真を撮るって、ファインダーを覗くって、こんな楽しみもあるのか。
時刻も8時近くなってくると、ポツポツとその場を立ち去る方が出始めました。
立派な三脚を据えて撮影していた本物っぽい方も帰り始めたから、今日の撮影チャンスはそろそろ終了なのかもしれません。
私もここらで切り上げてご飯にでもしましょうか。
ハートも満喫したし、何より空腹がピークです。
散策路を出口方向へ。
てくてく歩いていくと、あちこちに説明書きの看板が設置してあります。
そこで撮られた写真と共に。
夏になったらホタルの乱舞が見られるのだそう。
これは絶対来なきゃダメですね。
また、一眼レフをぶら下げて。
駐車場まで戻ってきたら、そこには温泉も食堂も。
いやこれ、最高のツーリングスポットじゃないですか。
でもね、開店時間は10時30分。
あと2時間以上、か。
無理です。とてもとても待ちきれません。
この温泉は次回のお楽しみに取っておきます。
ホタルを観に来る、その時に。
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