2021年1月。
デビューが報じられると同時にいきなり世のバイク馬鹿達の熱い視線を集めたGUNNER50。
バズーカ砲とも懐中電灯とも言えるファニーなデザインに、鮮やかなソリッドカラー。
実用性を完全に無視して、楽しさだけを追求したらこうなった・・・。
そんな生粋のファンバイクの匂いがプンプンします。
いやホント、久々に見たよ。こんなバイク。
居ても立っても居られず、正規代理店のクロニクルさんで実車を拝見&試乗させていただきました。
やっぱりこのバイク、只者ではない。
「実用性?なにそれ美味しいの?」と言わんばかりに楽しさだけを追求した一台。
日本では途絶えつつある本気のファンバイクの系譜、です。
GUNNER50(ガンナー50)はタイのフェニックスエンジニアリングが製造する、空冷単気筒49ccエンジンを搭載した原付1種。
トランスミッションは4速リターン。
最高出力は3.3psだそうです。
ファンバイクの象徴的な存在、往年のモンキーと同クラスのカタログスペックですね。
とはいえ、車体そのものは50のモンキーと比べたら大柄。
シート高も700mmちょっとくらいはありそうで、身長167センチの私には窮屈な感じは全くありません。
※改めてネットでスペックシートを確認してみると、シート高は802mm(!)でした。
ただ、圧倒的にスリムな車幅・シート幅のおかげで足付きは良好です。
久々の50cc。しかもお借りしたバイク。
恐る恐る、走り出すと・・・。
あ、遅い。
当たり前です。制限速度30キロの原付1種ですからね。トコトコ走るバイクです。
すぐさま幹線道路を外れて、脇道へ。
2速で左折して、アクセルを開けます。
3速、4速。
なんせ降ろしたての新車。まだミッションの当たりが付いていないようです。この辺は慣らしが終わる頃には馴染んでくるでしょう。
それ以外は思いのほか素直です。
ブレーキも掛けたら掛けただけしっかり効くし、直進安定性もまずまず。
お店の方は「タイヤが太い分、路面の凹凸を拾ってしまうので、ハンドルのブレが気になるかもしれません」とおっしゃっていましたが、個人的には気になる程ではなかったです。
それよりむしろ、細いタンクのせいでニーグリップできないのがちょっと心細い。
住宅地を抜け、田んぼを抜け、江戸川沿いへ。
やはりこのバイクには幹線道路よりもこういう道が似合いますね。
こりゃ楽しい!!
シフトダウンして、一気に堤防を駆け上がります。
堤防の上で一休みして、しばし鑑賞。
うーん。カッコいい。
唯一無二のデザインです。
クロニクルさんのHPには「遊び心が満載で誰しもが心を踊らされてしまいます」との記載がありますが、それどころの騒ぎじゃない。
満載どころか、遊び心 “しかない” バイクです。
ニーグリップを頑として拒否する砲身状のタンク。
その後方にちょこんと載った薄くて小柄なシートは、路面の情報をダイレクトにお尻に伝達してくれます。
そしてポケットにも収まりそうな手鏡サイズのバックミラー。位置を合わせるのにも一苦労ですが、合わせたところでこのサイズ。
おそらく「後ろを見るな。前を向け!」という叱咤激励でしょう。
もうね、乗りやすさとか、使いやすさとか、そんな話は二の次なんです。
お前ら、こういうオモチャ、好きだろう?
そういうことなんですよね。
好き好んでバイクなんていう不便な物に乗る馬鹿達にとって、これがとびっきりのオモチャである事は間違いない。
正直なところ、「これで80ccくらいあったらもっと良いのになぁ」という感想は抱いてしまうんですよ。
たぶん私だけでなく、試乗した多くの方が抱く印象ではないでしょうか。
でもね、シンプルなフレーム構造に、シンプルなエンジン。
「イジリたいならイジっていいんだよ?」と言わんばかりです。
おそらくこのバイクに魅了された方々が、こいつをさらに楽しくするアフターマーケットパーツを用意してくれることでしょう。
「もうちょいパワーを。ついでに30キロの制限速度と二段階右折から解放されたい」なんて考えた方が、ボアアップキットをリリースしてくれるのもそうそう遠い未来の話ではないかもしれません。
そうなったら沼です。間違いなく。
沼へと誘うバイク、です。
もともとこういう趣味性の高いファンバイクって、人気のジャンルでしたよね。
お気に入りの一台に巨額を投じてカスタムしたり、同じバイクをひたすら集めるコレクターも、それほど珍しい存在ではなかったと思います。
しかし、その代表格だったモンキーでさえ125ccとなって、車格も大幅にアップ。
趣味性と実用性を併せ持った現実的なバイクに生まれ変わったのは周知の通りです。
かつては隆盛を誇ったものの、国内市場では絶滅危惧種となりつつある50ccファンバイク。
そこに一石を投じる1台です。
タイに限らず、東南アジアのバイクマーケットが活況を呈しているとの話は良く耳にするけれど、これだけ実用性を無視したファンバイクが開発されたというのは実はちょっと驚きでした。
東南アジアの二輪車って、市民の脚として活躍しているイメージだったから。
そして50ccという排気量で投入されたこともしかり。これ、完全に日本市場を意識してますよね。
と思ったら、世界に先駆けて日本で発売されたそうじゃないですか。
なんか嬉しいですね、そういうの。
国内の四大メーカーが海外市場ばかりにこぞって注力する中、「日本のバイク市場も、まだまだ捨てたもんじゃないよ」と言われているみたいです。
GUNNER50。
関東では、千葉県松戸市のmoto shopクロニクルさんが正規代理店となっています。
同じタイのバイクメーカー、GPXの正規代理店でもあります。そう言った方がピンとくる方が多いかな。
鮮やかなカラーのGUNNER50が並んでいる姿は壮観の一言。
聞けば発売からわずか数日で、すでにいくつものオーダーを受けているとのこと。
気になるカラーがなくなる前に、お店に足を運んでみることをお勧めします。
ちなみにこの日はいきなりの訪問にも関わらず、とても親切に対応してくださった上、試乗にも快く応じてくださいました。
クロニクルさん、本当にありがとうございました。