観測史上最も危険とも言われ、東海から関東甲信越、東北にかけて広い範囲で猛威をふるった台風19号。
この接近に伴って、私たち夫婦は10月12日正午過ぎ、近くの市民センターへ避難しました。
大きな地震や台風などの災害が数多発生しているこの国にずっと住んでいるのに、これまで幸いな事に避難を伴うような被災をした事がありません。
「避難所に行こう」と考えることすら、初めての経験です。
幸いなことに被害は全くありませんでしたが、今後、避難しなきゃならないような災害が発生した時のために、また、これを読んでくれた方の参考になるように、ブログの趣旨とは異なるものの記録に留めておこうと思います。
まず結論だけ、最初に記しておきます。
みんな、一度は避難を経験しておこう。
今回の避難で一番印象に残っているのは、「今まで何度も避難所を開設しているけど、避難して来られた方は初めてなんです」という職員の方の言葉。
つまり、避難する側も受け入れる側も、圧倒的に経験が不足している、ということです。
経験がレベルアップにつながるのは、なにもRPGだけの話じゃない。
大きな被害を受けて、長い避難生活を余儀なくされる前に。
少しでも、避難する側の経験値を上げておきましょう。
【10月12日正午過ぎ】
観測史上最も危険とも言われている台風19号。
こいつの接近に伴って、我が家は10月12日正午過ぎ、近くの市民センターへ避難しました。
避難の記録なので、写真などは控えます。
ご了承を。
今、これを記しているのは、近くの市民センターに避難した直後です。
現時点での公のアナウンスは「避難準備」。
「お年寄りや避難に時間がかかる方は避難を始めてください」というレベルです。
ですが我が家は基本的に河川に近い低地で、堤防の決壊という最悪の事態がなくとも内水氾濫で身動きが取れなくなる可能性が低くない立地。ギリギリまで待って、浸水や強風の中で避難しなきゃならないなんて事になると厄介です。
早め早めに避難して、身の安全を確保する事にしました。
避難先は自宅からほど近い市民センター。
住所・氏名と緊急連絡先などを記入して、30畳ほどの和室に通されました。
夫婦2人で、座布団3枚が支給されます。
マットや寝袋を持参してきたので、室内の端にスペースを確保しました。
13時17分現在、こちらの和室には10数人の方が避難しています。今は避難している方が少ないので充分横になれるスペースがありますが、夜になって人が増えてきたら横になる事もできないかもしれません。
できたら今のうちに身体を休めておきたいところですが、小さいお子さんがウキウキで走り回っていますので、無理やり睡眠を取るのは難しいですね。
ちょうど今、急に雨脚が強まってきました。
おそらくこれからどんどん人が増えてくることでしょう。
【16時30分過ぎ】
避難される方が増えてきています。
30畳弱の和室に、現時点で30人ほど。
これから風雨が強まるにつれてさらに密度が上がっていくものと思います。
寝袋やマットを持っている方は、持って行かれた方がいいです。
ここはたまたま和室だから良かったものの、避難所が板張りの床の可能性もあるでしょうし、そこに長時間座っているのはかなりツラいでしょう。
ただ、このまま収容人数が増えてきたら、マットを広げておくのも困難になるかもしれません。
【17時45分ごろ】
相変わらず強烈な雨が降り続いていますが、それに加えて叩きつけるような風の音が大きくなってきました。
避難所となっている和室は温度・湿度とも高く、かなり蒸し暑いです。
が、エアコンの風向きのせいか場所によっては寒く感じている方もいるようです。
体温調節のしやすい服装が大切ですね。
これまでずっとスマホと睨めっこ状態でしたが、ふと気づくとかなりの空腹。
今のうちに先ほど買ってきたカップラーメンを食べておく事にします。
停電などになったら食べられないですからね。
ただこのカップラーメンという選択、あまり正解だったとは言い難い。
そもそもお湯を調達しなければ食べられないし、それに匂いが気になります。
たまたま空いている部屋があったので、そこで食べる事ができたんですが、避難所の中ではちょっと食べにくいです。
台風のように準備に時間を取れる災害ならば、おにぎりなんかを用意できればいいですね。
【21時過ぎ】
本格的に雨風が強くなってきました。
強風で窓に叩き付けられる雨が強すぎて、しっかり閉じられたはずの窓からかなりの勢いで雨が吹き込んできます。障子はもう、ずぶ濡れ。
職員の方がビニールを張って対策をしてくれています。
こういう時のお手伝いがちょっと難しい。
そこにはすでに寝床を確保している方がいるわけで、そこにズカズカ入っていくのも憚られるし、かと言って無視して座っているのも居心地が悪い。
みなさん同様の気持ちでマゴマゴしているような感じです。
と、ここで。
和室のスペースをお年寄りや子供たちに譲ってほしいとのアナウンス。
畳敷きの端っこの一等地から、リノリウムのホールにお引越しです。
やはり寝袋とマットを持ってきて良かった!
レジャーシートを敷いて横になっている方も居ますが、床が固くて寝ていられないレベルでしょう。
キャンプ道具を持っている方は、迷わず持参することをおススメします。
【22時10分】
消灯になりました。
廊下は電気が点いているものの、結構暗い。
というか、真っ暗。
LEDランタンも持ってきたけど、これだけ暗い中では逆に使えない。
とはいえ動く時には灯りがないと、寝てる方を踏んだら困る。
まぁ、そんな事はそうそうないか。
にしても、懐中電灯は必須。
【午前0時】
台風の中心は去ったようです、猛烈な風雨は落ち着きつつあります。
自宅から近い河川は氾濫の危険が報じられていないこと、すでに15時間ほど「避難準備」のままで警報レベルが上がっていないことなどを考慮して、自宅に戻ることにしました。
今は雨は止んでいます。
吹き返しの突風の危険はないとは言えませんが、家に残してきた猫どもが心配という気持ちが勝ったというのが正直なところ。
それに、たかだか12時間程度の滞在だったにも関わらず、避難所に留まるのはそれだけでかなり体力を削られます。
避難所から自宅まではものの数分なので、足元に注意しながら帰路につきました。
帰宅途中の様子は、Twitterにアップされた関東圏の被害に比べたらおとなしいくらいのものでした。
折れた枝や植木鉢などが散乱していたりはするものの、大きな構造物の被害や内水氾濫もなく、少し安堵を覚えたくらいです。
ただ、一つ気になったのが植木鉢でした。
実は前回の台風15号の時だったのですが、近隣にお住いの方の対策が心許なく、風で飛ばされて割れた鉢の破片が道路に散乱していました。
今回はむしろ被害が少なかったのですが、「前回あれだけ周りに破片を撒き散らしたんだから、せめて家の中に入れるなりの対策をしてくれよ」と思ったのは我が家が避難所に向かう時でした。
面と向かって言いにくい、という気持ちがあるのも正直なところです。
こういうのは、ホントはちゃんと言えるようにしないとダメですね。
【10月13日7時過ぎ】
台風一過。青空が広がっています。
とりあえず一安心といったところです。
が、スマホの履歴を見てみると、夜間にも河川の増水、氾濫に対する警戒を促す通知が来ていたようです。
やはり疲れていたんでしょう。
全く気付かずに熟睡していました。
少なくとも現時点で何の被害も出てはいませんが、河川の増水に対する警戒は台風が過ぎ去った後も続けるべきだったと思います。
もしこれで自宅が浸水して取り残されでもしたら、一旦避難した意味が全くありません。
これが一番の反省点。
【初めての避難を通して】
生まれて初めて経験した避難所。
ここで気づいたことを列記しておきます。
①情報は思ったほど入ってこない
②物資はできるだけ自己調達すべき
③避難所に詰めている職員の方は超大変!
④避難はしんどい
①情報は思ったほど入ってこない
早々に避難所へ行くことを決めた理由の一つは、「避難所の方が正確な情報が入ってくるのではないか」という期待から。
一度、市長自らが情報提供に来てくれましたが、それ以外は特に大きな動きがなかったこともあり、被災状況などのアナウンスはありませんでした。
今回のような半日程度の避難であれば、スマホからの情報が十分得られる状態なので不自由はありません。停電がなかったのもその要因かと思います。
ですが仮に堤防の決壊などが生じていたら、長期間の避難を強いられることになります。
スマホのバッテリーも限りがありますから、停電などが伴えばたちまち情報を得る手段を失います。
予備電源を用意しておくなど、自分で情報を得るための手段はできるだけ確保しておきたいところです。
②物資はできるだけ自己調達すべき
このブログを読んでくださっている方の中には、キャンプをされる方が少なくないと思います。
Twitterでも「避難所に寝袋持って行って大丈夫?」という声がありましたが、ぜひ持って行きましょう。キャンプ道具は確実に役に立ちます。
私はかなり早い段階で避難したこともあり、初めは避難所の一等地とも言える和室の一画にスペースを確保しました。が、その際、避難所の運営にあたっている職員の方から「お年寄りの方などが増えてきたら譲ってくださいね」と声をかけられていたこともあり、午後9時過ぎにリノリウム床の会議室に移動しました。
そしてこちらは和室とは打って変わってなかなか厳しい環境です。床が硬い上に座布団などの支給もなく、あるのは長テーブルとパイプイスのみ。
すでに何組かのご家族がレジャーシートを広げて休んでいましたが、長期間にわたって避難するようなことにでもなればかなり辛いはず。
マットと寝袋があるだけでも相当楽になるのは間違いないです。
「ウキウキ装備で行くのは気が引ける」という気持ちも分かります。ですが、「自前の装備は最大限活用して災害に立ち向かう」というスタンスが重要だと学びましたよ。
体温調節に適した衣服。
マットや寝袋。
ランタン。
避難が長期に及ぶようなら、シングルバーナーや調理器具、テントさえも役に立つと思います。
あともう一つ。
顔や身体を拭くためのシート、ありますよね。
スーッとするやつ。
あれもぜひ持っておきましょう。
汗でベタベタになると疲れが増しますよ。
キャンプをされない方も、安物のLEDランタンと膨張式のマット、それとエマージェンシーブランケットくらいは災害対策のためだけに買っておいてもいいと思います。
③避難所に詰めている職員の方は超大変!
当たり前のことですが、これが一番大事なことかもしれません。
避難所にさまざまな方が来られています。
高齢の方も多く、中にはご病気を抱えた方も少なくないでしょう。
こういった方々のケアをしながら次々に訪れる避難者の受付をし、機材を出したり雨漏りの対応をしたり。
誰がどう見ても大変な仕事です。
今回の避難で一番印象に残っているのは、「今まで何度も避難所を開設しているけど、避難して来られた方は初めてなんです」という職員の方の言葉。
つまり、避難する側も受け入れる側も、圧倒的に経験が不足している、ということ。
つまり我々はむしろ、「避難を経験しておくべき」なんです。
大きな被害を受けずに済んだこの災害で、「避難する」という貴重な経験をすることができた。
いきなり大災害で長期の避難を余儀なくされるのではなく、少なくとも1回分だけの経験を積むことができた。
これが、今回の最大の収穫です。
④避難はしんどい
避難生活はしんどいです。
たかが12時間で実感できるくらいですから、これが「何日も」となったら、体力的にも精神的にも恐らく想像を絶するほどのダメージです。
夜もロクに寝られないでしょうし、長引けば食糧や入浴といった新たな課題も生じるでしょうから。
しかも先ほども記した通り、避難する側も受け入れる側もほぼ全員が経験不足。
だからこそ、一度はみんな避難を経験しておいた方が良いんじゃなかろうか。
そう思って記したのが今回のブログです。
災害対策の専門家や、不幸にも何度も避難生活を経験された方からは異論があるかもしれません。
でもたぶん、いや絶対。
一度でも経験しておけば、何かしら役に立つことがある。
もちろん避難の機会なんか、ないに越したことはない。
でも万が一のため、「ちょっと大げさかな?」と思えるくらいのタイミングででも一度は避難を、避難所を経験してください。
それは絶対に糧になります。